アザデガン油田

アザデガン油田の開発権益が縮小されたと話題になっています。

私企業が自分のために油田の開発をするのなら、別に他人が口を出すことではありません。

しかし、国のレベルで考えると、今回の縮小は重要ではないと思います。というのは、この油田はペルシャ湾の唯一の出入り口、ホルムズ海峡の向こう側にあるからです。

日本にとって最悪のシナリオは、タンカーがこの海峡が通れなくなってしまうことです。なにしろ2005年の日本の原油及び粗油はほとんどが、この海峡を通って輸入されているからです。

具体的に書くと、輸入量は248,822千キロリットルで、このうち中東からの輸入が224,288千キロリットルです。割合では90.1%です。中東からの輸入の中にはオマーンのようにこの海峡を通らないものもありますが、イラン、イラククウェートカタールアラブ首長国連邦などの原油などほとんどはこの海峡を通らなければなりません。

で、万一、(よりは確率が高いような気がしますが、)この海峡が封鎖されたときは、アザデガン油田の権益を持っていても何の役にも立ちません。最悪のときには役に立たないのです。

逆にこの海峡が封鎖されない限り、外貨があれば原油の輸入は不可能ではありません。原油は、飲めません、食べられません、着られません、住むこともできません。売って金に買え、その金でものを買うほか仕方がないのです。産油国には長期的には原油を売る以外の選択はありません。

短期であれば原産が可能であり、それを利用しての値段の吊り上げはありえます。それに備えるのであれば、外貨を蓄積しておくほかに

1 ホルムズ海峡を通らなくていい油田開発の権益を獲得する(ただし、同時に値上がりする可能性を否定できません。)

2 ホルムズ海峡を通らなくていい開発済みの油田の権益を獲得する 

3 原油を備蓄しておく(40兆円もあれば5年分くらいの備蓄は可能です)

4 石油以外のエネルギー源(太陽光発電風力発電など)を確保する

といった手法があります。

国がやるとすれば、3,4でしょう。2の支援も考えられます。1は高リスクなので国民の税金でやることではないと思います。

安倍総理所信表明演説http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2006/09/29syosin.html)で、文脈が違うのですが、「国の庁舎について太陽光発電の導入を・・・進めます」と言っていて、まず妥当な線でしょう。

どうも権益というような言葉が出てくると、いつの間にか何が何でも負けてはいけないという感じになってしまいがちです。男のロマンみたいなことではなく、もっと冷静に考えるべきでしょう。

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