一部門、固定係数生産関数における期待の役割

一部門、固定係数生産関数による日本経済の現状の分析の試み その2」に、ラスカルさんからTB(http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20060919)を頂きました。十分考えきれていないのですが、とりあえず。

もし、このモデルにミクロ経済学的な基礎を与えていくようにすれば、そこでは「期待」が大きな役割を果たすでしょう。

このモデルでは、需要により経済成長率が左右され、今期の需要の状態が将来の労働供給に大きな影響を与えますので、複雑な期待形成が行われます。つまり、「将来が現在を規定する」だけでなく、今期における将来予測が今期の状態を決定し、今期の状態が将来の期待形成の基礎となる将来の経済のフィージブルな範囲を決定するのです。期待の役割はさらに大きくなります。

例えば、経済主体の政府への信頼度が高く、高い成長がもたらされると各経済主体が考えると現在の需要が高くなり、現在の需要が高いことにより将来の高度成長の可能性が開け、結果として高度成長が実現する可能性があります。逆に、政府への信頼度が低く、低成長が予想されれば、逆の結果となります。そこに他の経済主体がどのような期待形成を行うかの判断が入ってくると、もう、何が何だか訳のわからない状態になってしまいます。

経済で労働力需要は外生、需給は常に一致するという前提を置くモデルでは、枠組みがかなり限定されています。資本の蓄積も内部で決定されます。これに比べて、このモデルは枠自体がかなり可変的なのがこういう結果をもたらすのだと思っています。

一つのサンプルとして外生的に与えられている需要がランダムウォークをし、自分の所得も同じようにランダムウォークをすると考える主体が合理的期待形成をすれば、その主体の消費は単純に今期の所得によって決まります。

このモデルで、リカード立命題が成立するか考えてみたのですが、どうもよく分かりません。政府の支出は必ず将来の労働供給を増やしますが、それが需要され、所得が増えるかどうかは分かりません。可処分所得についても同じです。将来可処分所得が増えると判断した場合と、増えないと判断した場合では今期の消費は随分変わってくるでしょう。

また、小さなことですが、このモデルでは家計の間で所得格差が発生するメカニズムが組み込まれています。このため今期の支出の費用を将来負担するのは、誰かが問題になるので、単純には考えられないと思います。

人気blogランキングでは「社会科学」の28位でした。今日も↓クリックをお願いします。

人気blogランキング