2006年4-6月GDP速報その1

2006年4-6月GDP第一次速報が発表されました。

実質はこちら↓

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/qe062/rshihanki.html

名目はこちら↓

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/qe062/nshihanki.html

一時速報は、修正されて二次速報になり、さらに修正されて確報になります。

二次速報への改定の理由、方法はこちら↓

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/qe062/notej.html

実は、かなり改訂の幅が大きくなることがあり、一時速報にコメントしても、確報を見れば的外れになっていることが間々あります。

今回対前期比実質成長率が0.2%、年率換算0.8%になっています。これは民間の在庫投資が対前期比実質成長率を0.2%抑えているのせいでもあるのですが、これが二次速報でプラスマイナスゼロに改正されると、あっという間に対前期比成長率は0.4%、年率換算1.6となり、ずいぶん変わった印象になります。

と、予防線を張った上で、あえてコメントしますと基本的なパターンは変わっていないように思われます。特別に示さない限り四半期の原系列実質値です。http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/qe062/jissuu.html

まず、民間設備投資を見ます。これは、経済成長のエンジンとも言うべき項目です。対前年同期比成長率は9.8%と高く、設備投資の勢いは衰えていません。(注)実額では20.6兆円で、実質GDPに占める割合は15.2%です。

次に、財・サービスの輸出を見ます。これも、経済成長の第二エンジンとも言うべき項目です。対前年同期比成長率は10.2%と高く、輸出も勢いは衰えていません。(注)実額では19.7兆円で、実質GDPに占める割合は14.6%です。

二つあわせると、GDPの30%に近い項目がこれだけ高い伸びを示しているのですから、本来であればGDP全体の成長率が、3-6%くらいになっても不思議はありません。

しかし、現実の成長率はわずか2%です。なぜ、こんな差ができたのか?このギャップが現在の日本の経済の特徴を示しています。

まず、公的需要の減少です。公的需要は28.3兆円、構成比は21%です。これが1.3%減少しています。特に公的固定資本形成は7.5%も減少しています。行政改革で歳出を減らすということは、すなわち民間部門への公的需要を減らすということですから、当然の結果です。

次が輸入の増加です。輸入は15.2兆円で、構成比は11.3%です。これが7.2%増えています。

それでも、輸出の伸びのほうが高いので、純輸出は増加しています。

しかし、貿易を名目で見るとまた違った姿が見えてきます。

輸出は13.9%増加し、輸入はこれを上回る18.5%という高い伸びです。実質と名目の差は交易条件の悪化によってもたらされています。すると、「交易条件悪化の効果 数値例」で示したような効果が発揮され、国内総所得GDIの伸びは国内総生産の伸びを下回ります。

実質GDIの増加率は、わずか1.2%です。所得が伸びないのですから、消費が増えるはずはありません。民間最終消費支出の増加率は1.9%です。また、民間住宅の伸びも1.6%です。この二つの項目は、GNIの増加率から言えば、健闘しているというべきでしょう。

(注)民間最終消費支出は、75.6兆円で、構成比は56.0%です。

   民間住宅は、4.4兆円で、構成比は3.3%です。

 さて、今後、公的需要を抑制することに変化がないとします。すると、交易条件の悪化が収まるかどうか、輸出の伸びを維持できるかが問題です。

これらがうまくいいかないと、投資に影響が出る恐れが出てきます。現在の投資の堅調さの背景には、過去の抑制の反動があり、老朽化した設備の更新をこれ以上伸ばせないという事情もあるでしょう。一方、需要の伸びを見込んでいるという面もあるはずです。2%の成長に見合う投資の伸びが10%となるかどうかが問題です。(設備そのものの伸びが10%ということではありません。)

今後の成長には予断を許さないものはあります。

以下、余談です。

ところで、内閣府はGNIのデフレーターを公表してくれないでしょうか?

日経新聞は「消費・投資底堅く」というタイトルをつけていましたが、この二つを同列に扱うのは、無理な気がします。「投資好調・消費堅調」暗いではないかと思います。また、専門誌なのですから、輸出入の名目と実質の乖離にも一言触れてくれたらよかったと思います。「エコノミスト予測大外れ」という囲み記事も悪くはありませんが。

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