交易条件悪化の効果 数値例

2006年1-3月国内総生産速報 その3」で説明した交易条件悪化の効果を示す数値例を作ってみました。

実質で見た三面等価の原則が成立している例。

1-1 外国から原材料を50購入して、150単位の国内財を生産し、国内財50単位を輸出して原材料の購入費用に当てると言う単純な経済を仮定する。原材料と国内財の交換比率は1対1。経済は均衡していると仮定する。

1-2 このときの付加価値は、150マイナス50=100 これがGDP

1-3 輸出しなかった国内財100単位を販売して、所得100を得る。 これがGDI。

1-4 得た所得で国内財100単位を購入し、消費と投資に用いる。 これに輸出50単位を加え、輸入50単位を差し引くと100。これがGNE

1-5 したがって、GDP=GDI=GNE が成立。

実質で見た三面等価の原則の不成立する場合。

2-1 ここで、国内財と原材料の交換比率が、1対1から2対1に悪化したとする。このため国内財の輸出は100単位となる。他の条件は1と同じ。

2-2 このときの付加価値は、150マイナス50=100 GDPは変化なし。

2-3 輸出しなかった国内財50単位を販売して、所得50を得る。GDIは減少。減少分は、元の量の原材料輸入をするために新たに必要となった国内財の量、つまり、マイナスの交易利得。

2-4 得た所得50で国内財50単位を購入し、消費と投資に当てる。これに輸出100単位を加え、輸入50単位を差し引くと100。GNEにも変化なし。

2-5 したがって、実質で見るとGDP=GNEは成立するがGDIとは等しくなくなる。

3-1 今所得の8割を消費すると仮定する。

1のケースのGNEの構成は、消費80、投資20、輸出50、輸入50。純輸出は0。

2のケースのGNEの構成は、消費40、投資10、輸出100、輸入50。純輸出は50。

GNEで経済を眺めるとGNEは不変であるにもかかわらず、その構成は、純輸出が増加、消費が減少と変化し、GDIは減少するという結果になる。

4 交易条件が悪化した2006年1-3月期の状況を実質値で見ると

(1) GDEは前年同期比3.8%増加

(2) 消費は2.4%増加

(3) 輸出は13.7%増加

(4) 輸入は8.6%増加

(5) 純輸出は36.3%増加

(6) GDIは2.4%増加

となっています。

この期には、民間企業設備投資が7.6%増加、民間住宅が3.1%増加、公的需要は、0.2%増加と需要が増加したためGDEは増加していますが、GDIの伸び率はそれを下回っていますし、消費、輸出、輸入、純輸出の動きも数値例と整合的です。

人気blogランキングでは「社会科学」の34位でした。今日も↓クリックをお願いします。

人気blogランキング