国の借金と国民の貯金

「経済勉強中のみねこ」さんが「国は借金いっぱいだけど国民は貯金を持っている・・・なんだか変な感じです。」と書かれています。

http://plaza.rakuten.co.jp/nandeyakojyo/diary/200510250000/

これ↓を理解してください。簡単なことなのです。これを押さえておくと、この問題だけではなく経済についていろんなことが、分かりやすくなると思います。

誰かが何円か払っているときは、必ず別の誰かがそれを受け取っている。

例えば、みねこさんがどこかのお店で、何かを買い1,000円払ったとします。その時、そのお店はみねこさんにその何かを1,000円で売っているのです。みねこさんはお金を支払い、お店はお金を受け取っています。みねこさんがお店に支払っているのに、お店が受け取っていないということはありません。みねこさんが支払わないのに、店がみねこさんから受け取ることもありません。支払った金額と受け取った金額が違うこともありません。

みねこさんでなくとも、ある会社と会社の取引でも同じです。また、国が会社からものを買うときも全く同じです。

二つ目の例です。みねこさんがどこかの会社に勤めて、お給料を20万円もらったとします。その時、その会社はみねこさんに給料を20万円払っています。会社がみねこさんに給料を払っていないのに、みねこさんがお給料をもらうということはありません。みねこさんが受け取ったお給料と、会社が支払った給料の金額がが違うということはありません。

もし、みねこさんが公務員なら国からお給料をもらうことになります。この場合にもらったお給料が20万円なら、必ず国はみねこさんに給料を20万円払っています。国がみねこさんに給料を払っていないのに、みねこさんがお給料をもらうということはありません。みねこさんが受け取ったお給料と、国が支払った給料の金額がが違うということはありません。

最後に、みねこさんが国に税金を払っているとき、国は同じ額の税金をみねこさんから受け取っています。会社が税金を払うときも全く同じです。

ここまで書いたことは、ごく自然なことで、なんでこんなことが大事なのかと思われるかもしれません。もう少し我慢してください。

第二段階として、これまで、書いてきたことを少し整理します。

企業が個人に売った額=個人が企業から買った額  (1)

企業が国に売った額=国が企業から買った額     (2)

個人が企業から受け取った給料の額=企業が個人に払った給料の額  (3)

個人が国から受け取った給料の額=国が個人に払った給料の額     (4)

国が企業から受け取った税金の額=企業が国に支払った税金の額   (5)

国が個人から受け取った税金の額=個人が国に支払った税金の額   (6)

ここで、一つ一つの式の左辺と右辺は等しいので、これらのを全部足しあげても右辺と左辺は等しくなります。やってみましょう。これが第三段階です。

企業が個人に売った額+企業が国に売った額+個人が企業から受け取った給料の額+個人が国から受け取った給料の額+国が企業から受け取った税金の額+国が個人から受け取った税金の額=個人が企業から買った額+国が企業から買った額+企業が個人に払った給料の額+国が個人に払った給料の額+企業が国に支払った税金の額+個人が国に支払った税金の額   (7)

第四段階として、この式の意味を考えてみます。

左辺の意味を考えてみます。

企業が個人に売った額+企業が国に売った額は、企業の収入です。

個人が企業から受け取った給料の額+個人が国から受け取った給料の額は、個人の収入です。

国が企業から受け取った税金の額+国が個人から受け取った税金の額は国の収入です。

右辺の意味も考えてみましょう。少し順番を変えますが。

企業が個人に払った給料の額+企業が国に支払った税金の額は企業の支出です。

個人が企業から買った額+個人が国に支払った税金の額は個人の支出です。

国が企業から買った額++国が個人に払った給料の額は国の支出です。

左辺と右辺は等しいので、こうなります。

企業の収入+個人の収入+国の収入=企業の支出+個人の支出+国の支出  (8)

第五段階として、式を整理します。もう少しで終わりますから我慢してつきあってください。

両辺から国の支出を引きます。

企業の収入+個人の収入+国の収入-国の支出=企業の支出+個人の支出+国の支出-国の支出

右辺の国の支出-国の支出はゼロですから、整理するとこうなります。

企業の収入+個人の収入+国の収入-国の支出=企業の支出+個人の支出

次に、両辺から企業の収入と個人の収入を引きます。

企業の収入-企業の収入+個人の収入-個人の収入+国の収入-国の支出=企業の支出-企業の収入+個人の支出-個人の収入

企業の収入-企業の収入と個人の収入-個人の収入もゼロですから、整理するとこうなります。この式は大事なのでじっくり見てください。これが第六段階です。

国の収入-国の支出=企業の支出-企業の収入+個人の支出-個人の収入

左辺の国については収入から支出が差し引かれていますが、右辺の企業と個人については支出から収入が差し引かれています。

第七段階です。企業と個人を国民と考えると、こうなります。

国の収入-国の支出=国民の支出-国民の収入

さて、いよいよ最終段階に入ります。

今国の支出が収入を上回っているとします。このとき左辺はマイナスです。右辺もマイナスでなくてはいけません。右辺がマイナスであるためには国民の支出が国民の収入より少なくなければなりません。

国の支出が収入を上回っていれば、国債を発行することになります。このとき国民の支出が国民の収入より少ないのですから、国民は貯金をすることになります。

国が国債の発行を続けて、それがたまっていったものが国債残高です。

国民が貯金を続けて、それがたまったものが貯金の残高です。

国は借金いっぱいだけど国民は貯金を持っていることになります。

少しも不思議ではないのです。むしろ当たり前なのです。

これが当たり前なのは、

「誰かが何円か払っているときは、必ず別の誰かがそれを受け取っている。」

からです。

以下は、参考です。

私の経験からいうと、この「誰かが何円か払っているときは、必ず別の誰かがそれを受け取っている。」という事実を理解できるかどうか、それが経済にとって非常に重要なものであることを理解できるかどうかが、経済を理解できるかどうかの境目です。

多くの企業経営者や家計の経営者である主婦が、国は企業や家計が大きくなっただけのものだ、同じようなものだと理解して、財政政策や経済政策に意見を言われます。

確かに企業や家計と国は似ています。それはその通りなのです。でも、似ているというのには2種類あります。肖像と鏡像です。もし右手を挙げた方の肖像を描けば、右手が挙がっているはずです。鏡に向かって右手を挙げれば、鏡の中では左手を挙げています。似ているけれども違うのです。

一つの主体である企業や家計と多数の主体からなる経済は全く別のものです。企業や家計を理解でき、経営できても、それだけでは経済を理解することはできませんし、経済運営や財政運営ができるわけではないのです。

経営と経済、この二つを分けるのは「誰かが何円か払っているときは、必ず別の誰かがそれを受け取っている。」という事実です。

みねこさん、今回の記事は、少し長いのですが、できれば式を一つ一つ追いかけて、じっくり読んでみてください。きっと、経済の勉強に役立つはずです。

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