「子ども手当 その3」について 後編

「子ども手当 その3」について」の続きです。

この調査のいいところは、子供を持っている、つまり子供を産んだ女性を対象としているところです。一般論ではなく、自分自身の体験に基づいた意見を聞こうというのは良い企画であると思います。

(なお、比較対照のために子供をお持ちでない女性の意見も聞けるとさらによかったとは思います。)

ただ、残念なことに児童手当についての質問は、この長所を十分に生かし切れていないように思います。

児童手当と少子化対策の関係を調べるのであれば中心になるのは、「児童手当があれば女性が子供を産むようになるのか?」ということでしょう。

子供を産んだ方に聞くのであれば、こういう聞き方がよかったと思います。

まず、「子供を産むかどうか考えて子供を作りましたか?」

何も考えずに「できちゃった。」という場合には、妊娠には児童手当は影響を及ぼさないはずです。

「子供を作ろうと思ったとき、児童手当のことを知っていましたか?」

知らなければ、やはり影響はないはずです。

「児童手当が子供を作るか作らないかに影響をしましたか?」

これが、コアでしょう。

あと、「子供ができた後、児童手当は役にたちましたか?」 これは「多いに役立った」、「役だった。」、「あまり役に立たなかった」、「役に立たなかった」という選択式にした方がいいでしょう。

実際の質問は、「あなたは、児童手当が少子化対策として役立つと思いますか?」」です。http://www8.cao.go.jp/shoushi/cyousa/m_pdf/gaiyo.pdf

少々抽象的にすぎないでしょうか?

少子化対策として役立つ」というのはどういう意味でしょうか?

調査票を見ていないので、説明があったのかどうか分かりません。説明があったのであればいいのですが、質問した側の意図は、「一般論として、今後、児童手当があれば女性が子供を産むようになる」ということでしょうか。それとも「あなたがかつて子供を作ろう、産もうと決めるたとき、児童手当が大きな影響を与えましたか?」という意味でしょうか?おそらく前者ではないかと思うのですが、自信が持てません。わざわざ子供がいる女性に限って聞いたのは、後者の意図があったからとも考えられます。

これがはっきりしないと、せっかくの回答、

「とても役に立つと思う」が32.8%

「役に立つと思う」が42.8%

をどう受け止めていいのかよく分からないのです。

また、次の問の、もっと役立つするようにはどうしたらいいかに対する答え(「上限年齢をもっと引き上げる」、「手当の額を引き上げる」の両方を6割が選択しています。)も、また評価しにくくなってしまっています。

なお、回答者の28.6%が過去に受給されていて、46.9%が現在受給中というのも少し気になります。過去に受給していたり、現在受給したりしているとどうしても「役に立たなかった」、「立たない」とは回答しにくいのではないでしょうか。逆に受給されなかった方は、自分のこととして考えれば「役立たなかった」と答えられるに違いありません。

いろいろけちを付けましたが、この調査全体は悪いものではありません。

実は、私はこの調査全体から、「子育てに対する支援(子供を産もうと決心させるためにはではなく)としてはお金が一番」と子育て中、あるいは子育て経験者である女性がご自身の実感から主張されている、こういう風に受け止めました。

「子供は育てろ。でも金はかけるな。」(http://shokupanman.at.webry.info/200507/article_38.htmlからの引用です。)では無理なのです。

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