「
日本の貿易収支悪化。」で2005年上半期の貿易収支の黒字が26.4%減ったことについて書いたのですが、8月の貿易統計が発表されました。貿易収支の黒字は79.7%減って1、162億60百万円です。
http://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/2005/200508c.pdf
一月だけ見ても仕方がないので、1月から8月までの累計を出してみました。今年は、5兆5,139億71百万円の黒字です。昨年の同じ期間を取ると、7兆8,555億45百万円の黒字でしたから、2兆3,415億74百万円、29.8%の減少です。
地域別の数字も計算してみました。2005年は1月から8月までの数字、2004年は1年間の数字です。差は、これから4ヶ月、9月から12月までの間の貿易収支が、この額になれば、昨年の実績を達成できるという数字です。達成できるかどうかの判断ですが、これまでが8ヶ月、これからが4ヶ月なので、1月から8月までの数字の半分と「差」を比べてみると便利です。
地域別貿易収支バランス(百万円)地域 | 2005年1月から8月 | 2005年 | 差 |
---|
世界 | 5,513,971 | 11,953,343 | 6,439,372 |
中東 | -4,585,047 | -5,216,793 | -631,746 |
中国+香港 | 237,967 | 1,450,342 | 1,334,034 |
EU | 1,918,445 | 3,252,479 | 2,148,809 |
中国、香港以外のアジア | 3,813,447 | 5,962,256 | 2,148,809 |
米国 | 4,741,408 | 6,967,383 | 2,225,975 |
まず、唯一の赤字地域、中東との
貿易赤字を昨年の水準にとどめるのは不可能です。
原油の値上がりが、原因です。もちろん値上がりに伴う節約はあるでしょう。しかし、石油危機以来、ずっと節約努力を続け、乾いたタオルを絞るような状況になっています。これ以上の節約は、生産を落とすことでしかできないでしょう。
次に、中国+香港です。これも巻き返しは無理でしょう。世間でいわれているような印象とは違い、もう、それほど黒字を稼げる相手ではなくなっています。
EUも昨年並みにはいけそうもありません。
中国、香港以外のアジアについては望みがあります。
失速を懸念されている米国との貿易は黒字が拡大しています。昨年以上に稼げる可能性のある唯一の地域です。
合計してみると、どうも昨年並みの貿易黒字を出すのは無理なようです。
昨年ですと、米国で黒字を稼いだ分で中東での赤字を賄って、お釣りが来ました。さらに、中国、香港以外のアジア、EUでも黒字を稼ぎ、中国と香港でもそれなりに黒字を稼いでいたわけです。
今年も米国では昨年以上に黒字を稼げそうですが、中東の赤字が一挙に大きくなり、米国での黒字をつぎ込んでも、せいぜいわずかな黒字にできる程度です。ハリ
ケーンの影響で米国の景気が後退したり、
原油価格がさらに上がったりすると、ひょっとすると足りなくなるかもしれません。
中国と香港では、ほとんど黒字を出せそうにありません。米国に次ぐ黒字地域、中国、香港以外のアジアでは、そこそこいけそうですが、EUでは黒字が減りそうです。
今回の景気回復は貿易収支の黒字拡大から始まりました。貿易黒字は、GDPを構成します。貿易黒字が増えれば、その分だけGDP、つまり生産が増えます。企業の収益も改善しますし、所得も増え、雇用も増加するのです。
貿易収支バランス(百万円、%)年 | バランス | 増加額 | 増加率 |
---|
2000年 | 10,715,775 | - | - |
2001年 | 6,563,711 | -4,152,064 | -38.7 |
2002年 | 9,881,450 | 3,317,739 | 50.5 |
2003年 | 10,186,327 | 304,877 | 3.1 |
2004年 | 11,953,343 | 1,767,016 | 17.3 |
2004年(1-8) | 7,855,545 | - | - |
2005年(1-8) | 5,504,249 | -2,351,296 | -29.9 |
(9月30日追記 確報がでたので、この表の数字を更新しました。)
2001年を底に貿易収支の黒字は拡大を続けてきました。小泉総理の就任は、2001年の4月ですから任期中3年連続して、黒字が拡大していた訳です。今回の総選挙での記録的勝利にもも、貿易の黒字拡大は貢献していたはずです。
しかし、貿易黒字は永遠に増やせるのものではありません。国内の需要を増やすことによってしか、持続的な成長はできないと考えておくべきでしょう。企業の設備投資や
個人消費の回復に期待がかかるのですが、
定率減税の打ち切りなど
財政再建に向けての動きが強くなっています。
貿易収支で黒字が減っていることに注意しておかないと、景気を崩してしまいかねません。
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