非正統派の政策

bewaadさんのブログ(http://bewaad.com/20050722.html)を読んで、国際金融のトリレンマが気になってきました。

「日本の貿易収支悪化」(http://takamasa.at.webry.info/200507/article_15.html)で書いたのですが、一般的に「貿易黒字を永続的に増やすことによって、経済の成長を図ること」はできません。

しかし、雇用の拡大が最終的な目的なら、「経済を成長させることなく雇用の拡大を図る」という手品のような方法があります。

例えば、中国の元切り上げよって、米国の目が日本に向いたとします。上半期で相当な黒字を出し、しかも黒字が増えているのですから、文句を付けられる可能性はあります。(統計数字に興味のある方は、「日本の貿易収支悪化」(http://takamasa.at.webry.info/200507/article_15.html)をご覧下さい。)

国内の失業が未だ多く、輸出を減らしたくない、そのために円高にしたくないと思えば、通常ならドル買いをするか国内金利を引き下げるところです。

しかし、ドル買いには米国が目くじらを立てるでしょうし、国内金利は引き下げの余地がありません。リフレ派の主張に従って、長期国債を買いまくるという方法がなお残されたいますが、引き下げ得ても1.2%です。

オーソドックスな方法のどちらも取れないとき、政府が輸入するという手段が残されています。貿易収支の黒字分だけ政府が輸入をすれば、円高にはなりません。

この手法のいいところは、実質的には外国為替市場への介入でありながら、あまり外国から文句をつけられないことです。

そもそも、介入していること自体気づかれない可能性があります。実例を紹介します。中国が原油の備蓄を始めています。http://eneken.ieej.or.jp/data/pdf/1026.pdf

この事実は、新聞各紙でも報道されていましたが、外国為替相場との関係にふれたものは皆無でした。

原油や天然資源で輸入に頼らざるを得ないものを、貿易収支が黒字のときに政府が輸入し、備蓄するというのはなかなかいいやり方です。外貨準備を持つのは将来の輸入に備えるためですから、将来輸入しなければならないものを、外貨にゆとりのあるときに輸入しておくのは合理的です。特にその資源の値上がりリスクが高いなら。

もう一つの利点は、政府の支出は増加しますが、この支出は換金しやすい資産の増加を伴います。政府の信用という点では減税や公共投資に優ります。

また、外貨準備が多すぎる場合には資産のポートフォリオの多様化という点で望ましいでしょう。

最後の利点は、海上交通が維持できなくなったときや輸入が困難な事情が発生したときにもにも、国内備蓄で対応できることです。

ただし、このような政策を採るときには政府の財政政策か金融政策の自由度が失われます。どこかで増収を図るか、借り入れをしなければなりませんから。

最初に書いた、bewaadさんご指摘の国際金融のトリレンマとの関係で言えば、増収を図るときには、政府の財政政策の自由度が失われます。また、借り入れをするときには、政府の債務の増加を通じて金融政策に制約がでてきます。

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