児童手当 番外 その3

 mさんから、「児童手当 その2」にコメントをいただきました。コメント欄ではお返事し切れそうにないので、番外 その3を書くことにしました。

 mさんのコメントは、晩婚化して、出産時に働いているお母さんの年齢が上がると、給料も高くなっているため、児童手当などの所得制限に引っかかってしまうというものです。詳しくは直接コメントをお読みください。

 さて、児童手当も含め社会的な金銭給付を税金を財源に行うときに、大きく分けると二つの考え方があります。ひとつは、おおらかな考え方で、理由があって給付するのだから所得制限などせず、給付に課税もしないというものです。もうひとつは、広く集めた税金、つまり貧しい人たちからも集めた税金を使う以上、高い所得を得ている人には給付しないか、給付に課税して調整すべきだというものです。

 おおらかな制度は、あまり支持されていません。やはり貧しい人から豊かな人にお金を回すのには抵抗があるのでしょう。そこで、豊かな人には給付しないか、課税するということになります。

 

 豊かな人には給付しないとなると、これはその制度の中で所得制限をかける、つまり給付を担当する役所がいろいろな書類を出させて、審査や調査をして支給、不支給を決めることになります。

 税金だと給付する役所は単純に給付に専念し、課税は税務署が担当することになります。

 今の児童手当は所得制限方式を取っているので、mさんのご指摘のようなことが起こります。

 ここで、mさん御指摘の晩婚化のデータを紹介します。

平成15年は

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai03/marr.html

平成14年までは

http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/youran/data15k/1-43.xls

これを見ると長期的に女性の平均初婚年齢は上がっています。

24歳台だったのは昭和32年から51年までの20年間、

25歳台だったのは、その後の15年間、

26歳台だったのは、その後の8年間、

2000年から27歳台に上がって4年間続いています。2003年は、27.6歳です。

このところ毎年0.2歳上がっているので、今年は28歳になるかもしれません。

加速度的に上がってきているようです。

「児童手当 番外 その1」で紹介したように、出産年齢も上がっていますし、賃金もそれなりに上がっています。そこで、mさん御指摘のような現象がよく起こることになるのでしょう。

 ではどうするか。私は制限なく給付し、課税がいいと思っています。いくつか理由があります。

 

 まず、給付をするときに制限するとそれに引っかかっていないことを証明したり確認したりするのが面倒です。児童手当をもらおうとされた方は4枚ぐらい書類が必要だったのではないでしょうか。所得の証明を求める手間、その証明書類を発行する手間、それを受け取って出しに行く手間、出された書類を確認する手間。目に見えるだけでもやたらに手間がかかります。背景には所得制限を決める手間、それを窓口の公務員に説明する手間、説明されたことを覚える手間というものがあります。さらに、制限をめぐって窓口でいろいろトラブルや押し問答が起こります。

 どうせ税務署ならこういうことはもともとやっているので、二度手間にはなりません。福祉の部門で

完結させないほうが簡単なのです。

 福祉は給付に徹し、税務署は課税に徹する、この分業方式の方が社会的な効率は高いはずです。

 もうひとつは、給付するかしないかという二者択一にすると不公平が生じるからです。

例えば100万円以上は不支給、未満は支給ときまたとします。給付額を5万円としましょう。

所得99万円の人は支給されて合計104万円。所得100万円の人は支給されないので100万円のまま。逆転してしまいます。同じになるならいいのですが、逆転は変です。これを避けようとすると、給付額を変動させなければならず、これまた制度が複雑になって大変です。税金にするとこんな問題は生じません。別に税務署の味方をするわけではないのですが、税金の場合このような逆転は生じないようになっています。

 長くなりました。mさんからコメントをいただいて、考え切れていなかった問題を考えることができました。コメントにお礼を申し上げます。