日本の賃金の歴史と展望 その2

日本の賃金の歴史と展望 その1」の続きです。 労働組合に対する信頼はあるのですが、今、現実に労働組合が取り組めているかどうか、そこに対しては厳しい目が向けれらています。 特に、同じ仕事をしているにもかかわらず、正社員との賃金・労働条件格差が大きいとの不満とともに、違う仕事をしていた場合も労働の価値の評価をめぐって、争いを生じる事態となっている。この問題には、日本の賃金の歴史的課題が今日的な問題として凝縮されているともいえる。 賃金格差をめぐる問題は、男女間の賃金格差として認識されることも多い。日本においては、雇用形態の違いによって男女間の賃金格差を説明することが当然視されてきた。このような労働観は歴史的に形成されて来たと考えられることから、この雇用形態の違いによる賃金格差については、今後様々な職場できちんと論議する必要がある。(pp.74-75) 要するに日本の賃金について深刻な問題が起こっているにもかかわらず、正場での議論はまだ十分ではないということでしょう。 ILO には1951 年に採択された「同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約(第100 号)」があり、日本も1967 年に批准している。これは、労働基準法第4 条において男女同一賃金の原則が明文化されているから批准できたと言われている。雇用形態の違いに起因する賃金格差問題は、主婦パートや年金受給の高齢者が有期・短時間などの労働をしている間は問題が少なかったものの、非正規労働者の中にかなりの数の主たる生計者が生まれている現状では、大きな問題となっている。(p.75) 1997 年をピークに中高年層、中小企業労働者および非正規労働者の賃金は低下を続け、二極化やワーキングプアと呼ばれる労働者層が形成されてくる。これらの課題について、連合は取り組みを強めているが個別企業の労働組合での取り組みは、一部にとどまっており、そのことが労働組合全体の交渉力を弱める結果にもつながっている。つまり、同じ仕事なのに賃金が低い労働者の存在は、賃金が相対的に高い労働者の賃金を引き下げる役割を果たすという当然の現象が現れている。(p.88) 他人ごとではないぞ。問題を見過ごしていると自分たちにも跳ね返ってくるんだぞ、という企業別組合に対する警告でしょう。 ただし、現状では大手企業正社員労働者とそれ以外の労働者の間に、階層分化が起こっているとも考えられ、戦前の職員とそれ以外の労働者との収入格差と同様の状況が生まれつつあるとも考えられる。このように、労働組合バブル経済崩壊以降、デフレと雇用構造の変化に対応した賃金要求の根拠を構築しえていないように見えるが、非正規労働者の組合員への組織化を含めて、原点に立ち戻って考えてみる必要があろう。(p.88) 団結こそ力という労働組合運動の基本を踏まえて、賃金要求の根拠という実に基本的な問題にしっかり取り組 めということでしょう。ここはかなりきつい指摘であると思います。 人気blogランキングでは「社会科学」の12位でした。 今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング