メドベージェフ大統領閣下、プーチン首相閣下

メドベージェフ大統領閣下、プーチン首相閣下

メドベージェフ大統領閣下には、6,000キロを遠しとせず、モスクワからサハリンまでお越しになり、我が麻生総理と有益な会見をされ、その場で5月にはプーチン首相閣下が東京にお越しになることが決まったと聞いております。両国の平和的な交流が進み、領土問題も冷静に話し合われることは、まことに結構なことです。

現在、日本にどのように対応するか、平和条約の中身をどのようなものにするかを、鋭意検討されていることと存じます。ロシアとわが国の友好と協力、戦略的補完関係の発展を願うものとして、ロシアのために提言をすることをお許しいただきたいと存じます。

まず、ロシアの安全と繁栄にとって何が大事なのか、私見をご披露することから始めたいと思います。

現在のヨーロッパの地図を見ると、大北方戦争以前のピョートル大帝の治世の始まりの頃のようです。サンクトペテルブルグはロシアの領土であり、バルト海への出口は確保されているとはいえ、キエフウクライナの領土です。

首都モスクワから西の国境線まで500キロもありません。サンクトペテルブルグと西の国境は僅か150キロに過ぎません。思えば、ソ連時代、国境は遥か西にあり、その西に東ヨーロッパが勢力圏として広がっていました。

当時も西側の安定は重要でしたが、現在はその比ではありません。ロシアの2大都市、ロシア連邦の安全は西の安定に懸かっています。

もちろん、バルト三国白ロシアウクライナ、東ヨーロッパ諸国の主権と領土は尊重されなければなりません。いまさら戦車の出番が来ることはありません。これら諸国がロシアとの関係を配慮した外交、防衛、通商政策をすすめるようにすることが重要です。そのためには、友好的な関係を形成すると同時に、互恵的な経済関係を築くことが重要です。この目的のためには軍事力は役に立ちません。

さて、現在、ロシア経済は資源価格の急落のためにいささか苦しい状況にあるようです。しかし、ウクライナを別としてこれといった天然資源を持たないバルト三国白ロシア、東ヨーロッパ諸国は、金融危機の中、さらに厳しい状況にあります。ご高承のとおり、場合によれば東ヨーロッパの金融が崩壊し、それが引き金となって、ヨーロッパ、アメリカで深刻な金融問題が発生する恐れさえあります。

これはロシアと日本にとっても大きな問題であり、この危機を回避することが共通の利益です。同時に、ロシアと日本がこれら諸国を助けることができれば、これら諸国から感謝され、この地域におけるロシアと日本のプレゼンスは著しく強化されることは確実です。

ロシアと日本は共同歩調を取り、金融支援を実施すべきです。もし、ロシアが資金繰りに不安を感じているということであれば、日本で資金を調達することができます。円建てロシア国債を日本で発行すればよいのです。ロシアから日本が輸入しているものの代金でこの国債を償還することができるはずです。必要なら日本政府の機関が保証を行うことも可能です。ロシアと日本の友好関係が成立していれば。

さて、以上を前提としてロシアの対日平和条約案を考えると、上策、中策、下策があります。

まず、下策からご説明します。これは二島返還です。これとてロシアのこれまでの伝統的な立場からいえば思い切った譲歩であるとは思います。しかし、日本国民から見れば、かつて一度も外国の領土になったことのない日本固有の領土を、戦争の結果、譲ることになります。これは日本として受け入れられませんし、ロシアは軍事力に物を言わせて他国の領土を奪う国であるという確信を抱くことになります。ロシアと日本の協力は不可能になります。

中策は四島返還です。これは現在の日本の要求をロシアが受け入れたことになり、普通の二国間の協力関係を築くことは可能になるでしょう。しかし、大規模な、親密な協力関係に進めるかといえば、疑問が残ります。なぜなら、この国境線でも第二次世界大戦の結果決まったものであることに変わりはないからです。そして日本人にとって第二次世界大戦は、常に原子爆弾と日ソ中立条約違反とシベリア抑留の記憶と結びついているからです。そして何より、戦争の結果で国境を決めるということは、次の戦争によって変更できるということでもあります。敵意を残したまま平和条約を結んでも、恒久的安定は得られません。

上策は、日露戦争以前の国境に戻ることです。二度にわたるロシアと日本の戦争、その結果としての国境の変更を否定し、ロシアと日本が平和的に纏めた国境交渉の結果定めた国境、千島樺太交換条約で決まった国境を復活させるのです。この国境であれば、新たな話し合い、合意するのでなければ変更はできません。合意は拘束するのです。いま、このような提案をなされば日本国民は極めて高く評価するでしょう。忌まわしい記憶は拭い去られ、両国は強固な協力関係を結べます。シベリアのごく近くに友好国を持つことの利益、経済的利益、安全保障上の利益政治的利益はいうまでもありません。

最果ての小さな島々といえどもロシアの安全と繁栄のため最大限活用すべきです。保有したままでなんの役に立つのでしょう。日本に譲ったときに得られる東ヨーロッパでのプレゼンス、シベリア全体の安定と発展これに勝る利益があるとは思えません。そう、あの島々の最大の活用とは放棄することです。

利己的な気持ちからではなく、ロシアと日本の共通の利益のために、上策を取られることを心からお勧めします。

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