2007年度のSNA その2

2007年度のSNA」の続きです。 内閣府発表の2007年度GDPの実額表はこちらです。↓ http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/qe081/jissuu.pdf この表の見所は「財貨・サービスの純輸出」でしょう。これは「財貨・サービスの輸出」から「財貨・サービスの輸入」を差し引いたものです。 実質額(2005暦年価格)と名目額があるのですが、実質額は28兆2千億円。これに対し名目額はわずか8兆円です。20兆2千億円もの差があります。実質GDPと名目GDPの差は47兆6千億円なので、この4割以上が「財貨・サービスの純輸出」での差であることになります。 この様な差が生じたのは「財貨・サービスの輸入」のデフレーターが、急騰したためです。名目額では輸入は9.9%増加しているのですが、価格上昇の効果を除外した実質では2.3%しか増加していません。 輸入価格の高騰による交易損失の効果を考えずに、現在の日本の経済を理解することはできません。 試みに、2000年度から2007年度までのSNAの主要項目の実質成長率を見てみましょう。 実質成長率(%)
年度01020304050607
GDP△0.81.12.12.02.42.51.5
GDI△0.70.81.91.41.31.70.5
GNI△0.40.72.11.61.92.01.0
2007年度のGDPの成長率、まさに生産の増加率は、econ-econome さんが「08年第1四半期GDP速報値(一次速報値)の概観」で指摘されているとおり「(20)03年度以降の最低水準」で芳しい数字とは言えません。さらに良くないのは、GDPから交易損失を控除した後のGDI(粗国内所得)です。0.5%増加とマイナスになるのはかろうじて回避できていますが、2003年度の0.8%増加すら下回っています。これに海外からの所得の純受け取りを加えたGNI(国民総所得)を見れば、1%増加はしていますが、2006年度の半分です。生産に比べても所得はさらに低い増加に留まっています。国民の生活水準の向上は期待できません。 これを考慮すると、持ち家の帰属家賃を除く家計最終消費支出が1.3%増加したのは、好調といっても良いのではないかと思います。民間住宅はマイナス13.3%です。建築確認の余波でしょう。企業設備もマイナス0.5%です。法人企業統計のサンプル替えの影響もあるのでしょうが、2003年から2006年までの好調もついに息切れです。長期不況後のストックの復元も終わったのでしょう。景気循環の下降局面に入ったかもしれません。概して内需は弱く、増加率は0.3%、GDP増加への寄与度は0.3ポイントです。 外需について考えるときには、国際収支は名目で均衡するように調整が行われることに注意が必要です。実質で均衡するように動くことはありません。2007年度のように、輸入価格の上昇によるものでも名目で輸入が増えれば、輸出も名目で増えるのが自然です。輸出価格が相当上がらない限り、輸出は実質で増えるはずです。実際にも9.7%増加しています。2006年度よりも高い増加率です。 普通ですと、実質で見た輸出の増加→生産の増加→所得の増加→消費の増加という風に、外需から内需への転換が起こるのですが、今回は、これは期待できません。所得の増加は、その前に発生した交易損失を取り戻すにとどまるからです。 econ-econome さんの書かれているように、「現状では政府が目標とする実質成長率2%のラインには届いていないということに着目すべき」でしょう。さらに、実質成長率2%を目標としたときには、大きな交易損失を想定していなかったでしょうから、GDIやDNIもGDPと同じように伸び、国民生活もよくなると考えていたはずです。それであれば、GDPは2%より高い伸びにしなければなりません。 雇用に関していえば、GDPと連動するでしょう。2008年度3月卒の若者の就職までは大丈夫だと思います。しかし、企業の収益などを考え合わせると、それ以降の卒業者は要注意です。 ここをクリック、お願いします。 人気blogランキング 人気blogランキングでは「社会科学」では26位でした。