句読点と引用符 例1

句読点と引用符」で、日本では「  」を使って引用するときに、厳格なルールがないという意味のことを書きました。「  」を使って、書いてあっても、それは文書なり、発言なりを正確に再現したものではないという意味です。 ちょうどいい例がありました。柳沢厚生労働大臣の発言をめぐってのニュースです。 発言そのものは、27日に行われました。その内容については、新聞の報道は、ほぼ共通しています。読売新聞によると、こういうものだったようです。 人口統計学では、女性は15歳から50歳までが出産をしてくださる年齢だ。2030年に30歳になる人を考えると、今、7,8歳だ。もう、生まれてしまっている。産む機械といっては何だが、装置が、もう数が決まってしまった。機械といっては、本当に申し訳ないんだけれども。機械っていってごめんなさい。その産む役目の人が、一人頭で頑張ってもらうしかない。 2月14日追記 その後読売新聞でさらに再現性が高いと思われる報道がありましたので、引用しておきます。 今の女性軍が子供を一生の間にあまりたくさん生んでくれないということになっちゃった。人口統計学では、女性は15歳から50歳までが出産してくださる年齢ということなものだから、15歳から50歳の人の数を勘定すると大体分かるわけですね。もうほかからは生まれようはない。急に男が「産む役」になるということはできないわけだから。2030年ということになりますと、その2030年に例えば20歳になる人を考えると、今もう、7,8歳になってなきゃいけないことになる。2030年に20歳で「頑張って生むぞ」といってくれる人はもう生まれちゃってる。そういうことで、産む機械といっては何だけど、装置がですね、もう数が決まっちゃってる。機械の数・・・・・機械と言っては本当に申し訳ないんだけども、それが決まったとなると、あとは、・・・・・機械といってごめんなさい、その産む役目の人が、一人頭でがんばってもらうしかないんです この発言をどう報じたか、です。朝日新聞の例(asahi.com)をとりますが、他の新聞もほぼ同じです。強調は平家です。 1 2007年1月28日0時33分   見出し 「女性は子供を産む機械柳沢厚労相少子化巡り発言 本文  柳沢厚生労働相が27日、松江市で開かれた自民党嫌疑の後援会の集会で女性を子供を産む機械や装置に例えた発言をしていたことが分かった。 集会に出席した複数の関係者によると(中略)約30分講演。その中で少子化問題についてふれた際、「機械といっては申し訳ないけど」「機械といってごめんなさいね」などの言葉を入れながら、15歳~50歳の女性の数が決まっている。産む機械、装置の数は決まっているから、あとは、一人頭で頑張ってもらうしかない」などと述べたという。 2 2007年1月29日13時2分 見出し 首相が柳沢厚労相に注意「女性は産む機械」発言で 本文  安倍首相は29日朝、「女性は子供を産む機械」と発言した柳沢厚生労働相電話で、「このような不適切な発言がないように」と注意した。 3 2007年1月29日23時38分 見出し タガ緩む安倍政権 不規則発言乱発、波乱含み国会開幕 本文 安倍首相が少子化対策で大号令をかければ、担当の柳沢厚労相が「(女性は)子供を産む機械」と失言。 4 2007年1月30日15時14分 見出し 憤る女性議員、柳沢厚労相へ包囲網 身内からも批判 本文  女性を「子供を生む機械」と例えた柳沢厚生労働相に対し、辞任を求める声が野党の女性議員を中心に高まっている。 5 2007年1月31日1時24分 見出し 柳沢厚労相、与党内にも辞任論 「生む機械」発言 本文  民主党の小沢代表と社民党の福島党首、国民新党綿貫代表は、30日、国会内で会談し、女性を「子供を生む機械」と発言した柳沢厚生労働相の辞任を安倍首相に要求することを決めた。 6 2007年2月1日 見出し 厚労相発言 首相謝罪 更迭は否定      野党、審議を拒否 本文  民主党の小沢代表と社民党の福島党首、国民新党綿貫代表は、30日、国会内で会談し、柳沢厚生労働相が「女性は子供を産む機械」と発言した問題で、安倍首相は31日の参議院本会議で、国民におわびする一方で、柳沢氏を更迭する考えはないことを強調した。 引用の再現性をみると、1の28日の記事の本文の「女性を子供を産む機械や装置に例えた発言をしていた」が一番でしょう。 3の29日の記事の本文の「柳沢厚労相が「(女性は)子供を産む機械」と失言。」で(女性は)という括弧を使ったのは、2の29日の記事の「女性は子供を産む機械」より、正確です。ただ、同じ括弧を使うなら「子供を」まで括弧に入れたほうがより正確な再現です。なお、3の記事では、「失言」と記者の評価が入っています。 2の記事の見出しの「「女性は産む機械」発言」も工夫の跡が見られます。ただ、本文で「『女性は子供を産む機械』と発言した」と書いたことで、効果が削られています。 4の記事の本文の「女性を『子供を生む機械』と例えた柳沢厚生労働相」も「発言」ではなく「例えた」という言葉を使っている点で正確です。 あとの記事では、柳沢厚生労働相がストレートに「女性は子供を産む機械」と発言したと読めるようになっています。 新聞が「 」をどう使うかは自由でしょうし、実際にどういうルールを決めているのか分かりませんが、記事を読むときは、必ずしも発言を再現したものではないことに注意する必要があります。 人気blogランキングでは「社会科学」の25位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング