原油高 その2
さて、原油高の理論的な話です。
まず、基本的な変化から。
原油が高くなる前の状態を考えてみます。
原油輸入国(例えば日本)は車を200台生産しているとしましょう。この生産を行うためには原油が100Kl必要で、その全部を中東からの輸入によって手に入れているとします。ただでは手に入れられませんから原油と引き替えに中東に車を100台渡しているとします。車1台と交換に原油1Klを手に入れていることになります。
原油を輸入し、車を輸出しているわけです。原油輸入国が自分のために使えるのは車100台です。
なお、車200台のために原油が100Kl必要だというのは、車の生産の技術から決まっていて、すぐには節約ができないとします。
ここで、原油が1.5倍に値上がりし、原油1Klを手に入れるためには、車を1.5台渡さなければならなくなったとします。
車の生産量を変えずに200台のままにした場合を考えましょう。必要な原油の量は100Klで変わりません。これを手に入れるためには、今度は車を150台渡さなければなりません。自分で使えるのは、生産した200台から原油輸入のために使ってしまった50台を差し引いた50台だけです。
基本的には、これが原油値上がりの効果です。生産規模は変わらないのに自分で使える分が減ってしまうのです。生産は変わらないのに所得が減ると考えてもいいでしょう。
ここで、経済学を少し勉強したことのある方への注意です。このような説明をすると、実質GDPが下がると理解されるかもしれません。そうではないのです。
今、車1台の価格を100とします。値上がり前の原油1Klは車1台を同じ値段でしたから、その価格は100です。値上がり後は150です。
これを前提に実質GDPを計算しましょう。
値上がり前ではこうなります。
生産額 車200台×100=20,000
輸入額 原油100Kl×100=10,000
国内総生産(GDP)は生産から輸入を差し引いたものですから20,000-10,000=10,000です。これを全部使っているとすると消費は10,000です。
ついでですが輸出額は車100台×100=10,000です。
GDPを支出面から捉えれば、こういう具合になります。
GDP=消費+輸出-輸入
=10,000+10,000-10,000
=10,000
値上がり後は、どうでしょう。実質GDPの計算は価格変化がないとして計算します。
生産額 車200台×100=20,000
輸入額 原油100Kl×100=10,000
国内総生産(GDP)は生産から輸入を差し引いたものですから20,000-10,000=10,000です。
消費は車50台×100=5,000です。
輸出額は車150台×100=15,000です。
GDPを支出面から捉えれば、こういう具合になります。
GDP=消費+輸出-輸入
=5,000+15,000-10,000
=10,000
実質、つまり価格不変の世界ではGDPは全然変わりません。変わるのはそれを使うとき消費が減り、輸出が増えるという点です。支出構成が変化するのです
しかし名目で見ると全然違ってきます。
生産額 車200台×100=20,000
輸入額 原油100Kl×150=15,000
国内総生産(GDP)は生産から輸入を差し引いたものですから20,000-15,000=5,000です。
消費は車50台×100=5,000です。
輸出額は車150台×100=15,000です。
GDPを支出面から捉えれば、こういう具合になります。
GDP=消費+輸出-輸入
=5,000+15,000-15,000
=5,000
半分に減ってしまっています。
このように輸入価格が変化するときの経済の基本的な変化は、実質GDPでは捉えられないのです。
注意は以上で、元に戻ります。このほかにも変化は生じます。
(続く)
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