母子世帯 その3

 昨日に引き続いて、母子家庭等調査を読んでみたいと思います。調査そのものには、昨日の本文でリンクを張っていますので、そちらからご覧ください。

 昨日、母子世帯の母は、働いて収入を得ようとしている人たちだと書きましたが、それについてもう少しデータを。

 表6-1で母子世帯になる前の、表7-(1)-1で現在の母の就業状況が示されています。これを比較すると、就業者が増えているのですが、内訳を見ると一番増えた人数の多いのは常用雇用者で、15万人増加、次が臨時・パートで、8万人増加、3番目が派遣社員で3万人増加です。

 表8で母子世帯になった時不就業だった方の現在の就業状況が示されていますので、これを組み合わせると、面白い結果が出てきます。

 母子世帯になったとき、働いていた方

  常用雇用者 5万人増加

  臨時・パート 8万人減少  

 母子世帯になったとき、働いていなかった方

  常用労働者 10万人増加

  臨時・パート 17万人増加

 働いていた方は臨時・パートから常用へ移り、働いていなかった方は、臨時・パートで働き始めるということです。働く量を1段階ずつ上げているということでしょう。

 では、働く量を増やしたのか。働いていなかった方についての調査はないのか、あるいは載せていないだけなのか分かりませんが、HPでは情報がありません。働いていた方については、転職した理由が、表13-2に示されています。収入がよくない36%、勤め先が自宅から遠い11%、労働時間が合わない11%です。収入を求めて転職するのが一番多いということになります。

 今、働いている方の3人に一人が転職を希望されていて、(表14-2)、その半分以上の方が転職希望の理由として、収入がよくないことを挙げています(表14-4)。

 これは、働き方との関係を見ても分かります。表16-(2)-1で働き方別の就労収入が、表14-2で働き方別の転職希望が出ていますが、次のように収入が低いほど転職希望が多いという結果になっていす。

 常用雇用者 年間就労収入 252万円  転職希望率24.6%

 臨時・パート 年間就労収入 110万円  転職希望率44.4%

 母子世帯の母が困っていることの第一は家計(43.2%)、二位は仕事(22.5%)です。三番目は住居(17.4%)ですが、これもお金があれば解決できる問題だと思います。

 

 要するに、母子世帯の母は、収入を必要としていて、そのためにできるだけ働こうとしている、できれば常用雇用者がいいということです。

 最近のパートの増加は、母子世帯にとっては逆風です。

 常用雇用につくことの障害は、子供の世話、特に手のかかる末っ子の存在です。末子が大きくなるにつれ働く割合は高くなりますし(表3-(1)-1と表7-(3)-1から計算すると分かります。)、表7-(3)-1を見ると、末子が0-2歳のときは常用雇用者になっているのは働いている方の23%ですが、末子が大きくなるにつれて、この割合は増えて行き、18、19歳では52%になります。

 母子世帯の母親の皆さんは、子供を養うために働かなければならず、その意思もあるが、特に子供が小さいときは子供の存在が働くことの妨げになるというディレンマに苦しんでおられるのです。

そして、それを何とかしながら、昨日、書いたように普通の女性に比べてはるかに高い割合で働いておられるのです。

 なお、働いていない方で、働きたいと思っているのに就職していない(できない理由として)4人に一人が、病気、病弱を挙げています。

 

 働いている母親の頼りになる公的な組織は、三つあります。一番目がハローワークです。母子世帯の母の4割が利用されています。次が、市町村福祉関係窓口で、3割、福祉事務所で2割です。働く意欲の強さが分かります。(表21-1)

 子供が小さいときに限れば、保育所もずいぶん役に立っています。小学校入学前の子供の保育には63%が保育所を利用しています。働くことの大きな支えでしょう

 もうひとつが裁判所です。離婚した世帯で養育費の取り決めをしているのは全体では34%ですが、調停離婚だと75%、審判離婚だと50%、裁判離婚だと47%です。協議離婚だと27%しかありません。(表17-(2)-3)実際に受け取っているか、受け取っていたかを見ても同じ傾向です。(表17-(3)-3)