毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2017年6月速報)

6月分速報が発表されましたので、「毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2017年5月確報」に数字だけ追加します。コメントは5月分のままで修正していません。ご注意ください。 常用雇用は合計ではこれまで2%台前半の増加が続いていましたが、4月は2.6%と加速し、5月も2.7%増加とさらに加速してました。このうち一般労働者(フルタイム労働者)は4月と同じ2.6%の増加です。パートタイム労働者は3.3%の増加で、4月の増加率を上回りました。4月に続き人数の上ではパートタイム労働者の増加率がフルタイム労働者のものを上回りました。平均賃金を押し下げる効果を持ちます。 常用雇用の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
16年1月2.11.43.6
2月1.91.92.3
3月2.11.92.8
4月2.01.53.3
5月2.01.53.1
6月2.01.62.8
7月2.01.92.4
8月2.22.12.6
9月2.21.73.3
10月2.21.82.8
11月2.22.02.8
12月2.21.92.9
17年1月2.32.32.2
17年2月2.4〔2.4〕2.0〔2.4〕3.2〔2.3〕
17年3月2.4〔2.4〕2.2〔2.6〕2.7〔1.8〕
17年4月2.6〔2.5〕2.6〔2.9〕2.7〔1.8〕
17年5月2.7〔2.6〕2.6〔2.9〕3.3〔2.2〕
17年6月〔2.6〕〔2.6〕〔2.8〕
〔 〕は速報。 総実労働時間は、全体では1.0%の増加です。増加になったのは2016年の9月以来で、久しぶりです。フルタイムが、1.7%と大きく伸び、パートタイム労働者は0.7%と小幅の短縮でした。今年は、前年の5月に比べて平日が1日多く、日曜日が1日少ないというカレンダー効果が働いています。フルタイム労働者の所定内労働時間が1.6%増えているのは、かなりの部分これで説明がつきそうですが、所定外労働が3%も増えています。前年が1.4%短縮であった反動かもしれませんが、これで1月から連続して5カ月間の増加です。雇用が増えている中での残業の増加ですから、人手不足になっている可能性があります。さらなる雇用の拡大につながるかもしれません。 総実労働時間の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
16年1月△0.9△0.4△0.3
2月0.40.6△0.5
3月0.71.2△0.2
4月△1.5△1.0△2.4
5月△0.8△0.2△2.1
6月△0.30.2△1.7
7月△2.5△2.5△2.4
8月△0.8△0.3△2.2
9月0.41.1△1.5
10月△0.9△0.5△2.3
11月△0.10.3△1.7
12月△0.20.2△1.6
17年1月△1.1△0.6△2.0
17年2月△0.5〔△0.3〕0.0〔0.1〕△2.2〔△2.0〕
17年3月△1.7〔△1.9〕△1.5〔△1.7〕△3.1〔△3.5〕
17年4月△0.7〔△0.5〕△0.3〔△0.3〕△1.4〔△1.7〕
17年5月1.0〔1.2〕1.7〔1.6〕△0.7〔△1.0〕
17年6月〔0.1〕〔0.3〕〔△0.9〕
近似計算で労働投入の伸びを計算すると、全体では3.7%の大幅増加でした。フルタイムが4.3%、パートタイムでは2.6%の増加でした。16年2月以降、フルタイム化が進んでいます。平均時間当たり賃金の押し上げ要因です。パートタイム労働の供給はまだ余裕がありそうです。 総労働投入の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
16年1月1.21.03.3
2月2.32.51.8
3月2.83.12.6
4月0.50.50.9
5月1.21.31.0
6月1.71.81.1
7月△0.5△0.60.0
8月1.41.80.4
9月2.62.81.8
10月1.31.30.5
11月2.12.31.1
12月2.02.11.3
17年1月1.21.70.2
17年2月1.9〔2.1〕2.0〔2.5〕1.0〔0.3〕
17年3月0.7〔0.5〕0.7〔0.9〕△0.4〔△1.7〕
17年4月1.9〔2.0〕2.3〔2.6〕1.3〔0.1〕
17年5月3.7〔3.8〕4.3〔4.5〕2.6〔1.2〕
17年6月〔2.7〕〔2.9〕〔1.7〕
現金給与総額は、全体では名目0.6%の増加となりました。CPIの帰属家賃を除く総合で実質化した実質賃金は0.0%の横ばい。フルタイム労働者のものは0.7%、パートタイム労働者のものは1.4%のそれぞれ増加です。パートタイム労働者のものは4月に引き続いての増加です。5月は総実労働時間の短縮幅が低かったことが影響しています。 名目賃金の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
16年1月0.0(0.0)0.5(0.5)△0.3(△0.3)
2月0.7(0.3)1.0(0.6)0.8(△0.4)
3月1.5(1.5)0.81.5
4月0.0(0.3)0.5△0.8
5月△0.1(0.4)0.20.0
6月1.4(1.9)1.80.2
7月1.2(1.6)1.6△0.8
8月0.1(0.6)0.5△1.7
9月0.0(0.5)0.5(1.0)△0.1(0.4)
10月0.1(△0.1)0.4△0.2
11月0.5(△0.1)0.7△0.2
12月0.5(0.1)0.90.0
17年1月0.3(△0.1)0.40.0
17年2月0.4(0.0)0.4〔0.1〕△0.2〔0.2〕
17年3月0.0〔△0.4〕0.1〔△0.6〕△1.0〔△1.9〕
17年4月0.5〔0.5〕0.5〔0.2〕1.1〔0.8〕
17年5月0.6〔0.7〕0.7〔0.6〕1.4〔1.0〕
17年6月〔△0.4〕〔△0.5〕〔1.7〕
雇用と賃金を掛け合わせて、近似計算で賃金収入の変化を見ると、全体では名目3.3%、実質2.7%の増加でした。名目3%台はこれで2か月連続です。フルタイムは3.3%、パートタイムはそれを上回る4.7%の大幅増加です。ここではフルタイム化は進んでいません。 賃金収入の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
16年1月2.1(2.1)1.9(1.9)3.3(3.3)
2月2.6(2.2)2.9(2.5)3.1(2.7)
3月3.6(3.6)2.74.3
4月2.0(2.3)2.02.5
5月1.9(2.4)1.73.1
6月3.4(3.9)3.43.0
7月3.2(3.6)3.51.6
8月2.3(2.8)2.60.9
9月2.2(2.7)2.23.2
10月2.3(2.1)2.22.6
11月2.7(2.1)2.72.6
12月2.7(2.3)2.82.9
17年1月2.6(2.2)2.72.2
17年2月2.8(2.4)2.4〔2.5〕3.0〔2.1〕
17年3月2.4〔2.0〕2.3〔2.0〕1.7〔△0.1〕
17年4月3.1〔3.0〕3.1〔3.1〕3.8〔2.6〕
17年5月3.3〔3.3〕3.3〔3.5〕4.7〔3.2〕
17年6月〔2.2〕〔2.1〕〔4.5〕
家計消費指数(17年5月)」で示したように、5月から勤労者世帯の消費支出が名目、実質とも前年同月比プラスに転じました。収入の増加が消費の増加に素直につながってきたのかもしれません。 労働市場のタイト化が消費拡大につながってきたのであれば、先行きの展望は明るいでしょう。 人気blogランキングでは「社会科学」の5位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング