ベビーシッターと市場原理

作家の橘玲氏がベビーシッター事件に関連して「次のように」書かれています。 政府が「待機児童ゼロ作戦」を始めたのは小泉政権の2001年ですが、それから13年たったのに事態はまったく改善しないばかりか、ますます悪化しています。このようなことが起きるときは、たいていどこかに構造的な原因があります。 認可保育園に入所を希望する子どもは、申請をあきらめている潜在的待機児童を含めると全国に85万人もいます。これほど需要が大きければ、当然、そのサービスを供給しようとする事業者が現われるはずです。 しかし日本の保育事業ではこうした市場原理が働きません。国が認可保育園に巨額の補助金を投入して保育料を安くしているため、(補助金の投入されない)未認可の事業者が市場に参入できないからです。 保育の業界団体や労組は、「子どもの安全」を錦の御旗にあらゆる改革に強硬に反対しています。彼らが容認する待機児童対策は予算の増額で認可保育園を増やすことだけで、そのため厚労省は「(予算の裏づけとなる)消費税が上がらなければなにもできない」と問題を放置しつづけてきたのです。 私には、なかなか理解できない議論です。認可保育所に入れない85万人分の潜在需要があって、これに対して民間がサービスを有料で提供しようとしたとき、認可保育園との競争が発生するでしょうか?値段の安い認可保育園があっても入れないのですから、親には民間を利用するか認可保育所を利用するかの選択の余地はありません。認可保育所との競争は発生しないのです。したがって、認可保育所があることが市場参入の障害になっているのではありません。 ではなぜ参入が進まないのでしょうか?単純明快です。小さな子供を預かり、きちんと責任を持って、手間をかけ、いい環境で保育サービスを提供するには相当なコストがかかります。民間の事業者がこのコストを賄い、利益も出すためにはそれなりの水準の料金をお客様からもらう必要があります。このような料金を払える親があまりいないのです。いくら潜在的な需要があっても、需要側にお金がなければ需要として顕在化しません。「安くて良質の民間保育サービスがあれば使いたいなぁ。」と思っているけれどもお金のない人は、お客様ではありません。これが参入の進まない理由です。 市場原理というのはそういうものです。市場原理が働いていないから参入できないのではありません。市場原理に従っているから、参入しないのです。 人気blogランキングでは「社会科学」の5位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング