「抑止力?」について
「抑止力?」で、紹介したサンクトペテルスブルクでの記者会見の小泉総理の回答ですが、こんなものだったようです。逐語的に記録したものは見あたりませんし、いくつかバージョンがあるのですが、その一つです。
1 日本は常に安全確保に、しっかり取り組んでいかなければならにことは当然だ。
2 我々は、専守防衛だ。
3 日本を攻撃しても日本は抵抗しないとの誤った見方をさせない抑止力維持はしっかりしないといけない。
4 しかし、他国を先制攻撃する意図は全くもっていない。
5 日本は独自の安全保障、米国との安保条約の中でしっかりと確保していきたい。
6 北朝鮮のミサイル発射についても、変な気を起こさせないような日本の独自の抑止力維持を図ることが必要だ。
何を言わんとされていたのか、よく分かりません。
ちなみに、官邸の要旨ではこうなっています。
http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2006/07/17press.html
まあ、1は分かります。
4もこのままなら分かります。官邸版だと「不必要な」が何を意味しているのか、多少曖昧ですが。
2、3、5を組み合わせると、日本は専守防衛だが、米国にこれまでどおり抑止力を期待すると理解できないことはありません。これであれば、「抑止力維持」という表現は使えます。
でも、そうすると一番肝心な6の「日本の独自の抑止力維持」が理解できません。「今後、抑止力構築していくことが必要だ。」なら、これから米国頼みではない抑止力を独自に築くと言うことになり、これはその是非は別として理解可能です。
しかし「抑止力維持」となると、日本は既に独自の抑止力を持っていることになります。では、具体的には、それは何だと言うことになるのですが、よく分かりません。ミサイルに発射に関連して、変な気を起こさせない抑止力で、日本が既に持っているものと言うのは何でしょうか?経済制裁とでしょうか?であれあば、抑止力を、非常に広い意味で使っていることになります。
なお、官邸版だと「独自の抑止力を維持する、ということを図ることは必要だと思っている。」たかなり曖昧です。
まあ、とっさの反応でもあり、疲れてもいたでしょうから、どうこう揣摩憶測をしても始まらないのかもしれません。
世界は、北朝鮮がアメリカ本土に核攻撃を加える能力を持ったとき、日本がアメリカの核抑止力を信頼するかどうか、つまり、北朝鮮が日本だけを核攻撃した場合にも、アメリカが本土を核攻撃されるというリスクを冒してでも日本を守ると日本が思うかどうかを気にするわけです。だから、ロシアの記者は質問をしたのだろうと思います。信頼しなければ、それこそ独自の抑止力保有の方向に進みかねず、これは困る、とても困るのですから。
考え過ぎかもしれませんが、日本のマスメディアは全然気にしていないよで、これはこれで不思議です。外国の記者の質問に対する答えには、突っ込んだ質問をしないという観光でもあるのでしょうか?
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