日本の高校生は不人情?

4月19日の日経新聞の「教育」欄で、日本青少年研究所の千石理事長が、日本の高校生は「いささか不人情ではないか。」と述べられています。労務屋@保守おやじさんのブログでも話題になっています。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20050419

根拠は日米中の高校生の意識調査です。その中でも老後の親に対する意識の差を取り上げて、こういってられるのです。内容をご紹介しますと、次のようなものです。択一式の質問です。つまり、どれか一つだけを選ぶという仕組みです。すべての数値が紹介されている訳ではなくグラフで示されているのを読みとったので不正確ですが・・・。

選択肢1 「どんなことをしても面倒を見たい。」

日 43.1%

米 67.9%

中 84.0%

選択肢2 「経済的な支援はするが、介護は他人に頼みたい。」

日 20%弱

米 10%程度

中 米より高い。

選択肢3 「子供に頼らず、親自身が蓄えをしておくべきだ。」

日、米、中とも低い。

選択肢4 「公的な援助や福祉に任せたい。」

他の2国に比べ日本は、おそらく5%位で、他の2国はほとんど選ばれていないようです。

選択肢5 「分からない。」

日 30%弱

米 15%位

中 2%位でしょうか。

無回答もあり、これは米国が多いようです。

千石理事長は、選択肢1と選択肢2の結果を見て嘆いてられるようです。

少々、日本の高校生のために弁明をしたいと思います。基本的には、選択肢1,2の結果だけ見ての判断は早計ではないかと思います。答えの全体、社会的な背景も考慮すべきでしょう。きます。

まず、基本的な背景として、日本人の寿命が長いということがあります。

日本 男 78歳  女 85歳

米  男 74歳  女 80歳

中  男 70歳  女 73歳

余談ですが、中国だけ男女差が少ないようです。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life03/life-3.html

次に、日本には、介護保険があり、年金制度も国民皆年金になっています。

最後に、多分、高校進学率は日本が一番高く、次に米国、中国の順番でしょう。

まず、親の面倒を見なければならない期間が違っています。日本の場合、自分が引退してしてからも、場合によっては自分自身が老人になっても、親が生きているという可能性が高いのです。

こうなると、「分からない」という答え、当然、「どんなことをしても面倒を見たい。」という高校生の割合は減ることになります。

同じ原因で、「子供に頼らず、親自身が貯えをしておくべきだ」、「公的な援助や福祉に任せたい」もが高くなりますから、同じ効果が出ます。この二つの選択肢が「米中より明らかに多いことに暗然とした気分に」ならなくてもいいのではないでしょうか。

次に、介護保険制度があると、費用を払えば「介護は人に頼」むことができます。必然的に選択肢2を選ぶ高校生が増えるでしょう。そのために制度ですから、これを利用するのを「不人情」というのは言い過ぎではないでしょうか。私は、費用を負担する意志があるのは立派だと思うのですが。

また、高校生が社会の中で占めている地位、将来の生活の見込みも関係しています。中国の高校生は、かなり恵まれている層ではないでしょうか。貧富の格差が大きい中国では中学校に行くにも経済的に大変だというTV番組を見たことがあります。恵まれた地位にあり、親からの支えが大きければ、面倒を見る気にもなるでしょう。

また、千石理事長は「こういう不人情的価値観は、約十年前と比べて飛躍的に強まっている。」1996年には、選択肢1の割合が、「今回より三倍も多かった。」と述べられています。ちょっと、理解しにくい発言です。今回43.1%なのですから、三倍というと130%という、あり得ない数字になってしまいます。校正ミスで、本当は「二倍」なのでしょうか。

仮に二倍だとしても、介護保険の導入など、社会的変化があったのですから、この間に高校生が、飛躍的に不人情になったのではなくて、大きな社会的変化があったとも、調査結果は読めるのではないでしょうか。

少々、結論を急ぎすぎているような気がします。

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